愛憎を込めて毒を撃つ

エピローグ

◆約二年八か月後(十二月二十四日)
〇里乃と潤の家(夜)

3LDKのマンションのリビングの片隅にはクリスマスツリーが置かれ、電飾がカラフルな光を放っている。
テーブルにはご馳走が並び、里乃と潤は向かい合って夕食を摂っている。
今夜はクリスマスイヴで、二度目の結婚記念日でもあった。
里乃と潤の間には、ベビーラックで眠る最後三か月の娘――里奈(りな)がいた。

里乃「ふふっ、よく眠ってる」
潤「本当に可愛いな。里奈って将来すごく美人になるんじゃないか?」
里乃「親バカだね」
潤「仕方ないだろ。里奈は里乃にそっくりなんだから」
里乃「……」
潤「お、里奈。ママが照れてるぞ」
里乃「からかわないでよ、もう……」

おかしそうに笑う潤に、里乃が拗ねたような顔をする。
しかし、里奈を見つめるふたりの眼差しはとても優しい。
結婚して一年以上が経ってからようやく授かった我が子は、どんなものよりも大切で、ふたりの心は幸せで満ち溢れていた。

里乃「潤って、里奈がお嫁に行くときは号泣しそうだよね」
潤「やめろよ、そんな話。結婚どころか、彼氏ができたときの想像をするだけでムカつくのに」
里乃「里奈、パパはバカだねー。彼氏ができるのなんてまだ二十年近く先の話なのに、もうヤキモチ焼いてるよ」
潤「うるさい。可愛くてたまらないんだよ。だいたい、里乃にそっくりすぎるのが悪いんだ」

潤の言葉にくすぐったそうに笑う里乃。
至って真剣な潤は、少しだけ不服そうでもあった。

里奈「ふぇっ……ふぁ……」
里乃「あれ、おっきしちゃった? おっぱいはあげたばかりだし、オムツも綺麗なはずなんだけどな」
潤「よしよし。里奈、どうしたー?」

潤が立ち上がり、慣れた手つきで里奈を抱き上げる。
子どもと接することがあまりなかった潤は、里奈が生まれた三か月前にはなにをするにもたどたどしかったが、今では見違えるほどすべてがスムーズになった。
家事はもちろん、育児にも協力的で、オムツ替えや沐浴も率先してやってくれる。

里乃(潤はもともと素敵な旦那さんだったけど、今はすっかりいいパパだなぁ。もう少ししたら、里奈と潤の取り合いになっちゃいそう)
潤「里乃、どうかした?」
里乃「……潤は里奈の彼氏に嫉妬するんだろうけど、私は里奈にヤキモチ焼いちゃいそうだなって思って」
潤「なんで?」
里奈「潤は里奈を溺愛してるから、里奈は絶対にパパっ子になるでしょ? そしたら、私と里奈で潤の取り合いになりそうなんだもん」
潤「……バカ」

目を見開いた潤が、少し照れくさそうにしたあとで幸せそうに破顔する。

潤「俺は、里乃も里奈も世界で一番愛してるよ」

潤が里奈を抱っこしたまま里乃にキスをすると、里奈がタイミングを見計らったように笑顔になり、里乃と潤は顔を見合わせて満面の笑みになるのだった。


【完】


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