うさぎ系女子はライオン系男子に翻弄されて

March



玲に、登下校の特訓は合格と言われた。

これで、獅子くんといつか、登下校はできるようになるかもしれない。


少しうきうきした気分で、屋上に向かった。

獅子くんはいつも通り、あぐらをかいてそこにいて。


「宇佐」

「獅子くん!」

「やべえ、名前呼び最高」


獅子くんが目を細めて笑う。


いつもなら、そこから獅子くんは、いろんな話題を振ってくれるけど、今日は黙っていた。


今日のお弁当は、三色弁当。
大好きなはずなのに、あんまり味がしなかった。


無言のままお弁当を食べ終わって、お互い無言で水筒を飲み始めた。

どうして、今日…。
黙っているの?獅子くん。

わたしからもがんばって話を振ろう、と思って口を開いたその時。


「手、つなご」


ぽつりと、獅子くんがつぶやいた。


「えっ」

「ん」


獅子くんの大きな手がわたしの手に触れる。


あっ。


「恋人つなぎ」、じゃなかった。

普通のつなぎ方。「友達つなぎ」。



獅子くんのぬくもりが伝わる。

恋人つなぎより、なんだか落ち着く。

違う。
獅子くんだから、落ち着くの?



「どう?」


聞かれて驚く。


「どう?手、つなぐの」

「…落ち、着いた。手、つなぐの、いいかも」


素直に言うと、獅子くんは笑った。


「ほんとは恋人つなぎしたいんだけどね」

「…っ」

今朝、実はその練習をしていたとは言えない!

でも。


「ねえ、獅子くん」

「うん」

「わたし、手はつなげるようになった。だから、これから、もっといろんなのを練習して、獅子くんに迷惑かけないように頑張るね」


つながった手のぬくもりを感じながら言う。

獅子くんはまた笑った。



「迷惑じゃないよ。ゆっくり、一緒にやってけばいいじゃん」

「…うん」



優しい。優しすぎるよ。

獅子くん。獅子くんのために、わたし、特訓頑張ります!
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