子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 出産のための本も買って心の準備をしたのに、いざとなるとどうしていいかわからない。

 うれしいのに、同じくらい不安だ。

 とりあえず疾風さんには報告しようと思っていたのに、こんなときに限って彼は急遽実家に呼ばれたらしく、帰ってこなかった。
 なんでも大事なお客様の接待があるらしい。

 赤ちゃんの話は直接会って話したいから、言わなかった。

『今日もこっちに泊まるが大丈夫か? 寂しいだろ』

『全然平気。メダカがいるもの』

 あははと笑い合ったけれど本当は寂しい。

 ひとりには広すぎる部屋。気晴らしに見たはずの夜景は孤独感を増幅させた。すっかり慣れたと思っていたのに、高所恐怖症が復活したのか不安になってくる。

 ここにひとりで住んでいた疾風さんは、やっぱり強い人なんだろう。

 私も強くならないと。

 お腹をなでながら、この子のためにもと自分に言い聞かせ、早めに休んだ。

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