泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
無意識の優しさ
紗良は悩んでいた。

「うーん……」

仕事中だというのにときどき眉間にしわを寄せて、思いつめたように唸る。

「紗良ちゃんお昼いこーって、どした?」

お昼休みに突入しても自席でうんうん唸っている紗良に、同僚の依美が不思議そうに声をかける。

「ねえ依美ちゃん、男の人にお礼するときって何を渡したらいいと思う?」

「え、どうしたの、急に。はっ! もしかしてついに紗良ちゃんにも春が来た?」

ニヨニヨと楽し気な笑みを浮かべられ、紗良は慌てて否定する。

「違う違う。そんなんじゃなくて」

「えー、本当にぃ?」

「ちょっとお世話になっただけで。海斗にコンビニスイーツいっぱい買ってもらっちゃったから、何かお礼した方がいいよなーって思っただけで」

「ほーん」

「本当だってば」

「コンビニスイーツごときでお礼だなんて、紗良ちゃんって律儀なのね」

「だって、貰いっぱなしじゃなんだか落ち着かないんだもん」

それに、父の日の似顔絵を受け取ってもらうためにわざわざ近くのコンビニまで来てくれた。
さすがにこの事は依美には言えないけれど。
でも何かお礼をすべきだと思うのだ。
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