泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
杏介のお迎えに、海斗はジュニアシート持参で意気揚々と助手席に乗り込む。
海斗はいつも助手席に乗りたがり杏介も快く受け入れている。

そんな二人のやり取りを、紗良はぼんやりと後部座席から眺める。
今まではそれがとても好きだったし、それでいいよと思っていた。

それなのに、最近紗良と杏介二人で出かけることが増えたせいか、紗良も助手席に座りたいと海斗に対抗心が芽生えていることに気付いてそわそわと落ち着かなくなっている。

(こんなの大人げないわ)

そう、頭ではわかっているのだ。

「海斗、この席は順番だぞ。行きは海斗が座ってもいいけど帰りは紗良姉ちゃんと交代な。わかったか?」

「わかったー!」

まるで紗良の心を見透かしたかのようでドキリとする。

杏介は上手く海斗を説得するが、海斗は本当にわかっているのかどうなのか、空返事だ。
けれどこうやって配慮してくれることが嬉しくて、いつの間にか紗良の心は落ち着いている。

一喜一憂してしまう自分はなんて単純なのだろうと、紗良は人知れず笑った。
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