俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 善はにべもなく言い捨てる。

「な、なんなんだよ。お前、いつもいつも……関係ないのに出しゃばってきてさぁ」
「あのときは俺が部外者だったが、今はお前がそうだ。帰る気がないなら、俺たちが出ていく」

 善は日菜子の腕を引いて、出口に向かう。ふたりの背中に向かって悠馬はなにか叫んでいたが、善は足を止めなかった。

「……放してください」
「絶対嫌だ。誰が手放すか」
「そういう意味ではなく、ちょっと腕が痛いので」
「どういう意味でも絶対に離さない」

 そう言いつつも、きつくつかまれていた腕は解放され、代わりに優しく手を握られた。

(こんなふうにされると、言い出しづらくなっちゃうじゃない。善さんの馬鹿)

「善さん。お話があるんです」
「あぁ、俺も話したいことがたっぷりある。家で話そう」

 彼は車で来ていたようだ。助手席に日菜子を押し込むと、無言のまま車を走らせた。

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