俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 彼の手が背中に回り、そっと抱き寄せられた。

「けど、これからはもっと俺を頼ってくれ。かりそめの妻なんかじゃない。日菜子は俺の最愛の奥さんなんだから」

 胸に温かいものが広がっていく。こんなにも素敵な男性と縁あって夫婦になることができ、宝物まで授かることができたのだ。
 日菜子は大きな善の手に自分のそれを重ねた。じっと彼を見て、問いかける。

「私と一緒にこの子を幸せにしてくれますか?」
「当たり前だろ。日菜子と子どもを幸せにする権利は誰にも譲らない」

 彼はもう一度、ゆっくりと唇を合わせた。

「……十月十日は結構長いな」
「どんなに長くても、愛する子のためですよ」

 日菜子が子どもを叱るような口調で言うと、彼はクスクスと楽しそうに笑った。

「そうだな。日菜子と一緒なら、きっとあっという間だ」
「はい! 楽しみですね」

 おなかの子は善に似ているだろうか、それとも日菜子似だろうか。
 まばゆいほどに輝く未来に、日菜子は思いをはせた。



















 
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