俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「全然いいよ、謝らないで。むしろ、私のほうが軽率な行動だったかも。私と善が親戚だって、当然日菜子ちゃんも知ってると思ってたからさ」

 別のメンバーが口を挟む。

「ふたり仲いいし、南さんがとっくに話してるものだとばかり」

 南は軽く首をすくめる。

「いやぁ、私が自分からは言いにくいわよ。『大狼家の親族なの』なんて、ちょっとパワハラっぽいじゃない」

 中野も申し訳なさそうな顔で日菜子を見る。

「……俺も。悪気はなかったんだけど、誤解を招くような言い方だった。謝るよ」

 きっと、南自身があまり口にしたがらないことを勝手にしゃべるわけにはいかないと思ったのだろう。気遣い上手な彼らしい判断だと思った。

「いえ。南さんや中野さんはなにも悪くないです。私が素直じゃなかったのが原因なので……善さんに愛想をつかされないよう、もっとかわいくなりたいです」

 日菜子が意気込むと、南と中野は顔を見合わせて噴き出す。

「いや、日菜子ちゃんはすでに、十分かわいいわよ! 善にはもったいないくらい」
「あの社長が骨抜きにされてるくらいだしね」
「そうそう。日菜子ちゃんはいつまでもそのままでいて」

 南にギュッと抱き締められる。彼女からはシャンプーのような清潔な香りがした。

(あ。すっかり忘れていたけど……あの香水は結局なんだったんだろう?)
 
 中野や南たちは次の店に繰り出すようだったが、日菜子は一次会のみで帰宅することにした。妊婦だから無理は禁物というのももちろんあるが、善が迎えに来てくれることになっているのだ。
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