俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「おぅ、来たな。日菜子」

 休みの日も忙しくしていることの多い父、英一も在宅だった。やけにテンションの高いふたりの様子に日菜子の不安は増すばかりだ。嫌な予感は確信に変わりつつあった。

「えぇ、お見合い?」

 案の定、英一の口から飛び出したのは日菜子にとって最悪の話だった。といっても、いつかはくるだろうと覚悟はしていた。日菜子は氷堂地所のひとり娘なのだ。いつまでも自由気ままに暮らすことが難しいことはわかっている。

(とうとうか……)

 英一はうなずく。

「そうだ。まぁ。これまでも話はいろいろあったんだが……どの相手も日菜子にはふさわしくない気がしてなぁ」

 英一も蓉子に負けず劣らずの親馬鹿だ。日菜子の価値を完全に見誤っている。

(相手にふさわしくないのは私のほうなのに……)

「けどな、今度の相手はビビッときた。日菜子とは相性がいいと思うんだよ」

 英一は自信満々だ。自分と合う男性が三次元にいるはずない、どう理由をつけて断ろうか。日菜子は相手の情報を聞く前からそう結論づけていたが……続く英一の台詞はとんでもないものだった。

「来週の日曜日だからな! 先方もまずは気楽にと言ってくれてるし、ふたりだけの顔合わせにしたから」
「――ん?」

 うっかり聞き流してしまうところだった、日菜子は慌てて英一の顔を見返す。
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