俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
(善さんに女性として見てほしい。それだけなの……)

 潤んだ瞳でにらむように見つめてくる日菜子を前に、善は目を丸くした。

「唇にしてほしかったのか?」
「ちがっ……わなくもないですけど……」

 消え入るような声で日菜子はつぶやく。

「憎まれ口を叩いてたくせに、いきなりそんなかわいいこと言うのは反則だろ」

 善は日菜子の目尻からこぼれた涙を優しく拭う。そのまま彼の指先が唇に触れた。

「誓いのキスを頬にした理由は……唇を味わったらもう止まれなくなりそうだったから」
「善さん?」

 彼の瞳の奥に火がともる。

「言っとくけど、ストップは聞かないから」

 熱い唇が重なり、角度を変えながらキスは深まっていく。

「ふっ、あっ」

 気がつけば、日菜子の身体はソファに押し倒されていた。彼の体重の重みは恐怖ではなく安心感を与えてくれる。そのことに自分でも驚いた。

(怖くないわけじゃない。でも、善さんのぬくもりはホッとする)
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