戻り駅
☆☆☆

 誠が無断で早退したとすると、行き先は一つしかない。


 良治の家だ。


 なにかに感づいている誠は、良治に直接話をするつもりなのだ。


 でもそんなことをしていいのだろうか?


 良治は誠が考えているよりも、もっと危険な相手と関わっている。そんなところに誠ひとりで乗り込んでいくなんて!


 学校を出る前に領事の家の場所は先生から聞いていた。良治の家へ行く途中にある、あの空き地が見えて自然と歩調がゆるくなった。


そこに白い車が停車しているのが見えたのだ。


 その車を見た瞬間呼吸が乱れ、胸が締め付けられる。極度のストレスで手の先が痺れてうまく息を吸い込むことができない。


倒れてしまいそうになりながらも、私はゆっくりと近づいていった。


 ここまでくれば引き返すわけにも、逃げ出すわけにもいかない。


 空き地には白い車の男と良治、そして誠の姿が見えた。


 三人は真剣な表情でにらみ合ってる、私はそっと電信柱の影に身を隠した。


 誠はあの運転手とも顔見知りなんだろうか?


 私はゴクリと唾を飲み込んで異様な組み合わせの三人を見つめた。


 三人の間に流れている空気は張り詰めていて、身を切ってしまいそうなほどだ。


 誠は良治と男を交互に見つめ、そして意を決したように口を開いた。


「銀行強盗の犯人は、お前たちだな」


 それは私が想像していたよりも更に大きな衝撃的事実だった……。
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