魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
口説いてるんだけど
合コンに参加したというだけで、私には相当な非日常だ。
ところがそれだけに留まらず、私は今、間接照明で照らされたムーディーなバーのカウンター席に、胡散臭いイケメン副操縦士と並んで座っている。
今夜この数時間だけで、私の一生分の世にも奇妙な出来事を集約したみたいだ。


「お詫びにご馳走するよ。ほら、乾杯」


神凪さんは、ダンディーなスコッチグラスの縁を摘まんだ。
こんなに雰囲気あるバー、私は今まで来たことがない。
なにを頼んでいいかわからないと言ったら、バーテンダーが女性に人気があるというカクテルを作ってくれた。


私の手元にあるギムレットの背の高いグラスに、神凪さんが自分のグラスをカチンとぶつける。
私が乾杯に応じなくても構うことなく、男らしい喉仏を上下させて一口ゆっくり飲んでから、グラスをカウンターに戻し、


「飲まないの?」


顔の前で両手の指を組み、小気味よく首を傾げた。
私は彼に視線を投げたものの、すぐに手元のグラスに落とした。
神凪さんがやれやれといった感じで、首を竦める。


「酔わせてホテルに連れ込もうなんて考えてない。安心して」

「なっ……!?」


涼しい顔してドギツいことを言われ、私はギョッと目を剥いた。
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