やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
第十一章 反逆罪で逮捕に、極刑!? これって現実ですか!?

 それから一ヶ月が経った。朝、四人の騎士たちを送り出した後、ビアンカは厨房で後片付けをしていた。

(オムレツの量が、今ひとつ少なかったわね。皆さんに、悪いことをしたわ)

 今朝は、卵があまり獲れなかったのだ。アントニオの分がないので、どうにか四人分はまかなえたが、このペースが続くと少々不安である。

「ルチアが最近産んでくれないのよねえ。アントニオさんに、懐いていたからかしら?」

 思わず独り言を言うと、クスクスという笑い声が聞こえた。

「お姉様、その表現は誤解を生みますわよ?」

 スザンナだ。姉と同じく料理番になりたいという彼女の決意は、どうやら本物らしく、定期的にここへ習いに来るようになったのだ。ビアンカの妹ということで、エルマも騎士らも、彼女を可愛がってくれる。特にジョットは、スザンナをお気に入りの様子だった。

「スザンナ、また来たのね。熱心だこと」
「ルチアお姉様も本気になっておられますし。私もぼんやりしてられませんわ」

 武芸試合でビアンカに恥を掻かせたことで、ひどく反省したルチアは、本格的に仕立屋に弟子入りしたのだ。その心意気に、スザンナも触発されたようだった。

「ところでお姉様、アントニオさんはお元気でいらっしゃるのかしら?」
「……ええ。一度、お手紙はいただいたけれど」

 ビアンカは、慎重に答えた。いくら想ってもらっても、アントニオの気持ちには応えられないというのが本音だ。このまま距離を置いた方がいいように思う。とはいえ、彼が王立騎士団へ入団を決めたのは、ビアンカが王都へ行くと誤解したせいだ。それには、責任を感じていた。完全に無下にもできないまま、無難な返事を書き送ったのである。

「ねえ、お姉様」

 スザンナは、ふと真剣な顔になった。

「ステファノ殿下の料理番になるかどうかはともかく、王都へは行った方がいいんじゃございません? アントニオさんを選ばないことには、チェーザリ様と結婚させられてしまいますわよ?」

 テオの名前が出た瞬間、ビアンカは胃が痛くなるのを感じた。ステファノと共にこの土地を去ってからも、テオは折に触れ、カブリーニ家へプレゼントをよこすのだ。王子の料理番という話が消え、アントニオもいなくなった今、両親の気持ちはテオに傾きつつある。それは、最悪の事態だった。

(ああっ。テオ様とまた結婚しないために、料理番という道を選んだというのにっ。というより、どうして三択なのかしら。私に、仕事に生きるという道はないというの……!?)

「ここのお仕事なら、私に任せていただいて結構ですから……」

 スザンナが、語気を強める。そこへエルマが、姿を現した。
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