やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
7
ゴドフレードは、やおらイレーネの方を向き直った。
「順調か? 大分大きくなってきたな」
「ええ。最近は、よく赤ちゃんの動きを感じられましてよ」
そうか、とゴドフレードは愛おしげに妻の腹を撫でた。
「楽しみになさってくださいませね。きっと、王子ですわ」
「王女も可愛いと思うが? それに、娘の方が育てやすいと言うだろう」
妻のプレッシャーをさりげなく和らげようとしている、ゴドフレードの気遣いを感じて、ビアンカは心温まるのを感じた。
(本当は、王子だと存じているのですけどね……)
以前の人生では、イレーネは男児を出産していた。その子がレオナルドと名付けられることまで、ビアンカは知っている。だがそれは、言ってはいけないことだった。
(それに、歴史が少しずつ変わっている気がする。その点でも、うかつなことは言えないわ……)
「それにしても、仕事が山積みだ。甘いものでも食べないことには、やってられん」
パンケーキを頬張りながら、ゴドフレードはぼやいた。
「ビアンカ嬢。明日から、私のデザートの量は倍にしてくれるか?」
「お止しなさいませ」
ビアンカよりも先に、イレーネがたしなめた。
「お父上と同じ病になられたら、どうなさるおつもりです?」
死因を病気と偽ったコンスタンティーノ三世だが、実は本当に糖尿病を患っていたことが、後ほど発覚したのだ。長年にわたる暴飲暴食のせいと思われたが、国王は医師に口止めしていたため、ゴドフレードらの耳には入らなかったのである。嘘から出た実、とでも言うべきか。
「……それは、困るな。ビアンカ嬢、やはりいつもの量でよい」
ゴドフレードはおとなしく引き下がると、何やら書類を広げた。
「残る仕事は、これだな。カルロッタ夫人の元愛人たちの釈放だ。即位に伴う恩赦、という形を取る」
「確かに、いつまでも捕らえておく必要はございませんわね。陛下が崩御され、夫人も追放された今となっては」
イレーネも頷く。見るともなしに、ビアンカは書類を見た。噂には聞いていたが、ずいぶん大勢の男性の名前が連なっている。呆れていたビアンカだったが、そのうちの一人の名前に、目は釘付けになった。
――テオ・ディ・チェーザリ伯爵。
「順調か? 大分大きくなってきたな」
「ええ。最近は、よく赤ちゃんの動きを感じられましてよ」
そうか、とゴドフレードは愛おしげに妻の腹を撫でた。
「楽しみになさってくださいませね。きっと、王子ですわ」
「王女も可愛いと思うが? それに、娘の方が育てやすいと言うだろう」
妻のプレッシャーをさりげなく和らげようとしている、ゴドフレードの気遣いを感じて、ビアンカは心温まるのを感じた。
(本当は、王子だと存じているのですけどね……)
以前の人生では、イレーネは男児を出産していた。その子がレオナルドと名付けられることまで、ビアンカは知っている。だがそれは、言ってはいけないことだった。
(それに、歴史が少しずつ変わっている気がする。その点でも、うかつなことは言えないわ……)
「それにしても、仕事が山積みだ。甘いものでも食べないことには、やってられん」
パンケーキを頬張りながら、ゴドフレードはぼやいた。
「ビアンカ嬢。明日から、私のデザートの量は倍にしてくれるか?」
「お止しなさいませ」
ビアンカよりも先に、イレーネがたしなめた。
「お父上と同じ病になられたら、どうなさるおつもりです?」
死因を病気と偽ったコンスタンティーノ三世だが、実は本当に糖尿病を患っていたことが、後ほど発覚したのだ。長年にわたる暴飲暴食のせいと思われたが、国王は医師に口止めしていたため、ゴドフレードらの耳には入らなかったのである。嘘から出た実、とでも言うべきか。
「……それは、困るな。ビアンカ嬢、やはりいつもの量でよい」
ゴドフレードはおとなしく引き下がると、何やら書類を広げた。
「残る仕事は、これだな。カルロッタ夫人の元愛人たちの釈放だ。即位に伴う恩赦、という形を取る」
「確かに、いつまでも捕らえておく必要はございませんわね。陛下が崩御され、夫人も追放された今となっては」
イレーネも頷く。見るともなしに、ビアンカは書類を見た。噂には聞いていたが、ずいぶん大勢の男性の名前が連なっている。呆れていたビアンカだったが、そのうちの一人の名前に、目は釘付けになった。
――テオ・ディ・チェーザリ伯爵。