やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
第四章 恋のお膳立てに乗っている暇はございません!
1
約束の一週間が経過した。その夜、ビアンカ、エルマ、そしてアントニオはじめ五人の騎士たちは、食堂に集合していた。エルマは、無言で帳簿に目を落としている。
「――どうなんだ」
あまりに、沈黙が長かったせいだろう。アントニオは、苛立ったように促した。
「少なくとも、料理は合格点だろう。皆、美味かったと満足してる。というか、エルマ自身、毎度完食してたじゃないか」
「腹が減ってりゃ、何だって食べたくなるさ」
エルマが、ぼそりと言う。するとジョットが、間髪入れずに言い返した。
「年だから、そうそう食欲は湧かないって言ってたのは、誰だっけ?」
アントニオは、ため息をつくと、帳簿をエルマからひったくった。興味津々といった様子で、他の四人ものぞき込む。真っ先に感嘆の声を上げたのは、ジョットだった。
「すげえ。予算内……どころか、余りまであるじゃん!」
ビアンカはこの一週間、倹約に倹約を重ねたのである。豚脂という予定外の出費分を取り戻そうと頑張った結果、逆にゆとりまで生まれたのだ。
「エルマ?」
アントニオがチラと見ると、エルマは口ごもった。
「どうせ、激安店でも教えてもらったんだろ。自力とはいえないさ」
「エルマ!」
アントニオは目をつり上げたが、ビアンカはそれを制した。
「確かに初日、安いお店を教えてもらったのは事実です」
全員が、息を呑んだ。
「なので、百パーセント自力と認めていただけなくても、仕方ありません。でも私は、それを補うだけの努力を、これからしてみせます。エルマさんに合格と認めていただけるまで、二週間でも三週間でも頑張り続けるつもりです。ですから、もう少しだけ、こちらへ置いていただけないでしょうか?」
エルマは、またもやしばらく黙り込んだが、やがて頷いた。
「何にしても、この一週間、予算内に収めたのは事実だ。本採用としよう」
おおーっと、歓声が上がった。続いて、拍手が湧き起こる。アントニオは、ビアンカを見て微笑んだ。
「おめでとう」
「あ、ありがとうございます……」
エルマは、そんな二人を横目に、さっさと席を立った。
「毎週、こんな集まりをさせられるのは、たまったもんじゃないからね。あたしには、仕事が山ほどあるんだ」
「ありがとうございます。頑張ります!」
ビアンカは立ち上がると、心からエルマに礼を述べた。すると、待ちきれないとばかりにジョットが言い出した。
「じゃあ、今夜早速歓迎会な!」
「歓迎会!?」
そう、とジョットが頷く。
「俺ら、ビアンカちゃんは絶対本採用になるって確信してたからな。今日に備えて、金を貯めてたのよ。さ、飲みに行こ!」
「そうそう。賭けようかって話も出たんだけど、採用の方に皆賭けるから、成立しなくてさ」
チロが苦笑する。若いが飲んべえだというマルチェロなどは、すでに席を立とうとしていた。歓迎会なら、その分揚げ菓子を二つもらったんだけどなあ、とビアンカは思った。とはいえ、それを暴露するわけにもいかない。少し考えてから、ビアンカは言った。
「私のために企画してくださったのは、とても嬉しいんですけど。よければ、そのお金で、代わりにお願いしたいことがあって」
「――どうなんだ」
あまりに、沈黙が長かったせいだろう。アントニオは、苛立ったように促した。
「少なくとも、料理は合格点だろう。皆、美味かったと満足してる。というか、エルマ自身、毎度完食してたじゃないか」
「腹が減ってりゃ、何だって食べたくなるさ」
エルマが、ぼそりと言う。するとジョットが、間髪入れずに言い返した。
「年だから、そうそう食欲は湧かないって言ってたのは、誰だっけ?」
アントニオは、ため息をつくと、帳簿をエルマからひったくった。興味津々といった様子で、他の四人ものぞき込む。真っ先に感嘆の声を上げたのは、ジョットだった。
「すげえ。予算内……どころか、余りまであるじゃん!」
ビアンカはこの一週間、倹約に倹約を重ねたのである。豚脂という予定外の出費分を取り戻そうと頑張った結果、逆にゆとりまで生まれたのだ。
「エルマ?」
アントニオがチラと見ると、エルマは口ごもった。
「どうせ、激安店でも教えてもらったんだろ。自力とはいえないさ」
「エルマ!」
アントニオは目をつり上げたが、ビアンカはそれを制した。
「確かに初日、安いお店を教えてもらったのは事実です」
全員が、息を呑んだ。
「なので、百パーセント自力と認めていただけなくても、仕方ありません。でも私は、それを補うだけの努力を、これからしてみせます。エルマさんに合格と認めていただけるまで、二週間でも三週間でも頑張り続けるつもりです。ですから、もう少しだけ、こちらへ置いていただけないでしょうか?」
エルマは、またもやしばらく黙り込んだが、やがて頷いた。
「何にしても、この一週間、予算内に収めたのは事実だ。本採用としよう」
おおーっと、歓声が上がった。続いて、拍手が湧き起こる。アントニオは、ビアンカを見て微笑んだ。
「おめでとう」
「あ、ありがとうございます……」
エルマは、そんな二人を横目に、さっさと席を立った。
「毎週、こんな集まりをさせられるのは、たまったもんじゃないからね。あたしには、仕事が山ほどあるんだ」
「ありがとうございます。頑張ります!」
ビアンカは立ち上がると、心からエルマに礼を述べた。すると、待ちきれないとばかりにジョットが言い出した。
「じゃあ、今夜早速歓迎会な!」
「歓迎会!?」
そう、とジョットが頷く。
「俺ら、ビアンカちゃんは絶対本採用になるって確信してたからな。今日に備えて、金を貯めてたのよ。さ、飲みに行こ!」
「そうそう。賭けようかって話も出たんだけど、採用の方に皆賭けるから、成立しなくてさ」
チロが苦笑する。若いが飲んべえだというマルチェロなどは、すでに席を立とうとしていた。歓迎会なら、その分揚げ菓子を二つもらったんだけどなあ、とビアンカは思った。とはいえ、それを暴露するわけにもいかない。少し考えてから、ビアンカは言った。
「私のために企画してくださったのは、とても嬉しいんですけど。よければ、そのお金で、代わりにお願いしたいことがあって」