先生と私の三ヶ月
「帰りが遅くなって本当に悪かった」
「先生は何も悪くありませんよ。純ちゃんを部屋に入れた私が悪いんです」
「お前は悪くない。悪いのはお前の旦那だ」
 ガリ子の目にまた薄く涙の膜が浮かんだ。

「違うんです。先生。純ちゃんは悪くありません。純ちゃんは今日、嫌な事があったから仕方なくて」
 ガリ子はさっきから同じ言葉を繰り返している。酷い目にあっても妻としての立場を変えず、旦那を守ろうとするのか……。

 どうしてガリ子は、こうクソ真面目なんだ。もっと旦那に怒ればいいのに。怒らないから、つけ込まれて旦那にいいように利用されているというのに。

 腹が立つ。やっぱり一発ぐらい殴れば良かった。

「先生、本当に純ちゃんは悪くないんです」
 涙にかすれる声が痛々しい。なんでお前はそう言えるんだ。

「この話はもうやめよう。ガリ子、今日はどうしてた? お前の話が聞きたい」
「はい」と返事をして、恩人の恵理さんとカフェに行った事をガリ子が話し出した。

 恵理さんの事を話すガリ子は笑顔混じりの表情を浮かべた。良かった。笑顔を見せてくれて。ガリ子の泣き顔よりも笑顔を見ていたい。

 さっき、ガリ子が旦那に襲われている所を見て、心臓が握りつぶされたように痛かった。ガリ子が誰よりも大切だ。

 今わかった。俺はガリ子が好きだ。













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