先生と私の三ヶ月
 コーヒーを淹れてくると、今度は先生の隣に座るように促され、腰を下ろした。先生はいただきますと手を合わせてから、食事を始め、あっという間にフレンチトーストを平らげる。やっぱり何も食べないで書いていたんだ。お昼は胃に優しいものを作ってあげようか。

 目が合うと先生が微笑んだ。

「うまかった。ごちそうさま」
 
 口元と顎の付近に無精ひげが生えていて、それが見慣れなくて、ドキドキする。どんな姿になっても先生はカッコイイ。さすがイケメンだ。

「先生、何か必要な物はありますか? あ、お昼ご飯のリクエストは?」
 先生の左腕が私の左肩を掴んで引き寄せる。後ろから抱きしめられるような恰好になり、自然と私の頭は先生の左肩の上に乗っかってしまった。息がかかる距離にさっきよりもドキドキしている。

「ガリ子がいいな」
 耳に直接、甘い先生の声が吹き込まれて、どくんっと大きく脈が跳ねた。

「わ、私は食べ物ではありませんよ」
「恥ずかしいのか? 頬を真っ赤にして」
 えっ、と確かめるように頬に触れると先生がクスッと笑った。

「お前は本当にかわいいな」
 チュッと先生が頬に触れている私の手の甲にキスをした。
「せ、先生……」
 驚いて目を見開くと、先生が楽しそうに笑った。

 恋人になって欲しいと言われた夜から、先生とスキンシップが増えた。慣れないスキンシップに私の胸はいつもドキドキしっぱなしで、9月30日を迎える前に心臓がどうかなっちゃいそう。

「えーっと、黒田さんがいらしてますよ。今、リビングでお待ちです」
「待たせておけばいい。黒田の目的は他にもあるからな」
「他?」
 先生が悪戯を企む子供のような笑みを浮かべた。
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