先生と私の三ヶ月
 朝陽に照らされた白亜の洋館に深く頭を下げてから歩き出した。

 門までが遠い。
 歩かなきゃ。

 これからは一人で生きて行かなきゃ。
 不安もあるけど、大丈夫な気もする。
 それに寂しくなんかない。先生との思い出がたくさんあるから。

 この三ヶ月、終わってみれば楽しかった。 
 憧れの小説家望月かおると一緒にいたなんて夢みたい。
 先生ともっと小説の話をすれば良かった。

 あ、サインもらってなかった。

 今さら気づくなんて遅すぎる。なんか笑える。
 先生、私が望月かおるの大ファンだって知っていたのかな?

 あっ、やっと門についた。

 門がぐにゃっと歪んで見える。
 
 目の奥が熱い。

 どうして涙が止まらないんだろう。

「今日子!!」

 涙を拭っていたら、いきなり後ろから肩を掴まれた。
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