先生と私の三ヶ月
「お前は流星と父親を会わせないのは俺たちが会わせないようにしてるってどうせ決めつけてたんだろう。それで大人の事情で会わせないのは可哀そうだって安っぽい正義感振りかざしたんだろう? 最低だな。お前のせいで俺は流星に本当の事を言わなければならない。父親は流星を捨てて家を出て、今どこにいるかもわからないってな」

 安っぽい正義感って言葉にカチンとくる。
 確かに事情がわからず余計な事を言った。私は最低だったかもしれない。
 でも、私だけが一方的に責められる事なの?

 悔しい。悔しくて胸が苦しい。

「……私だけが悪いんですか? 何の説明もなかった先生に落ち度はなかったんですか?」
「何だと」
 先生が低い声を出した。
 本気で怒っている男の人の声だ。純ちゃんもそういう声で私を怒る。私はいつも何も言い返せず、純ちゃんの怒りが収まるのを待っていた。

 もう我慢ばかりしているのは嫌だ!

「先生はズルイです! 大事な事は何も教えてくれないし、私ばかりが悪いって責める。私は先生のアシスタントなのに。一緒にこの家で暮らしているのに。流星君の事も、先生が小説が書けない事も教えて欲しかった。私なりに先生を支えたかった。私は先生の書く小説が大好きなんです。望月かおるの小説が大好きなんです。アシスタントの仕事をやろうと決めたのは精一杯先生をお支えしたかったからです。無理な事ばかり言われたけど、先生の小説の為だと思って、私なりにやって来たんです! それなのに……酷いです」

 心にあった事を全てぶちまけた。激しい感情が全身を駆け巡る。胸が苦しい。気持ちが追い詰められる。目の奥から感情を吐き出すように涙が溢れた。
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