気だるげ男子の無自覚な独占欲

一人だったはずなのに……?




 私はまず、自分の目を疑った。


 そして次に、これは夢なんだと言い聞かせた。


 だって……


「……動かないでよ」


 ぎゅうっと私を拘束しているなにかが、視界いっぱいに映っているから。


「えっと……?」


 寝起きで不機嫌であることを差し引いても低いその声は、どう考えても男の子のもので。


 私が横になっている場所は、寝ている間に拉致でもされていない限り保健室のベッドの中なわけで。


 寝る前とは全然違うこの状況のせいなのか、それとも“彼”自身の服か何かの香りが充満しているからか。


 くらくらとして上手く頭が働かない。理解が追い付かない。


 頭上から降ってくる声の希望のとおり、私はぴしりと固まるしかなかった。


 連日続けている、とても計画的とは言えないテスト勉強のせいで私を襲った睡眠不足。


 それを解消するために、4時間目が終わってすぐにここへ来て。

 それから一人でベッドに横になっていただけなのに……これは一体どういうことなんだろう?


 私を抱き締めるこの人はどこのどちら様……?


 ……そう思ったけれど。



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