心の温度

「そうだったんですか。自分と他人の心の温度差って難しいですよね」

「そうですね……知恵さんは僕の心の温度わかりますか?」

「え、中川さんの心の温度?」

「そうッス! 知恵さんはハッキリ言わないとわからないようなので…知恵さん、俺はあなたに一目惚れして好意があります! 今のこういう狭い車内というシチュエーションだと、俺の心の温度は100℃ッス!」

「え、一目惚れ?……いつ…」

「井上不動産の社宅での偽装恋人の話し合いの時、子供達と遊んで帰って来たら貴方がミネラルウォーターを渡してくれた時ッス!

今は、俺の心の温度を知っておいて下さい。

あ、あそこのパン屋の前で降ろしてもらえますか?」

「え、パン屋さん? あ、はい…」

と言って、動揺している知恵。

中川もドキドキしてどうしていいかわからない。

「知恵さん、俺と結婚を前提でお付き合いして下さい。
返事は今度会った時にして欲しいッス。宜しくお願いします。」とパン屋の前で停車した車から中川くんが降りて行った。
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