【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
【序章】夢見がちな少女と3人の王子

1.交渉成立

 公爵令嬢クララは呆然と立ち尽くしていた。

 彼女の目の前には初対面の年若い男性が二人。

 一人は栗色の柔らかい髪の毛にダークブルーの瞳、人の好さを表情にまで映したような、そんな優男。繊細な刺繍の施された上衣、身に着けている装飾品などから、その高貴な生まれが見て取れる。

 もう一人は金髪碧眼の線の細い男で、とても整った目鼻立ちをしている。けれど、己の容姿に対する自信の表れだろうか。高慢ちきに微笑んでいて、あまり良い印象を受けない。一切の装飾を取り払った一見質素な身なりだが、肌触りのよさそうな上質のシャツやズボンを身に着けていた。


「どういうことなのでしょう?わたしは――――内侍としてここに参りました」


 クララは震える声音でそう呟く。

 内侍とはこの国の城に出仕する女官の一種で、いわば王族の側近、秘書のような役割を担っている。少なくとも、クララが事前に調べたどの本にも、そう書かれていた。

 16歳のクララがこれから仕えるのは、この国の第3王子。フリードという同い年の王子だ。

 案内役の騎士から案内されたこの場所は、フリードの執務室で。二人の身なり等鑑みれば、栗色の髪をした優しそうな男性の方が、フリードなのだろう。

 今日からはここが己の職場、居場所になるのだ――――。つい先程までクララはそんな希望を抱いていた。
 けれど、この部屋に入ってすぐクララに告げられたのは、予想だにしない内容だった。


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