【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

33.Heros show up late

 それは、レイチェルとのやり取りから数日後。
 クララが伝令役として、本城へと向かった時のことだった。


(なんだろう……城内がやけに騒がしい)


 行き交う騎士や文官たちの多さ、彼等の表情から、何か常ならぬことが起こっているのだと分かる。誰かに事情を聞きたいが、とても話し掛けられるような雰囲気ではない。


(フリード殿下は何も仰っていなかったしなぁ……)


 この状況が元々予期されていたものだとすれば、フリードは一言そう、教えてくれただろう。教えてくれなかったということは、フリードも何も知らなかったということだ。

 コーエンは未だ、執務室に顔を出していない。どこにいるのか、何をしているかもクララは知らぬままだ。


(お父様なら、何か御存じかしら)


 有事の際、それらの情報は宰相の元へ真っ先に集まる。幸い、クララのお遣い先は、宰相である父親の執務室にも近い。


(んーー……とはいえ、本当に大事だったら、わたしがいると邪魔になってしまうか)


 内侍として働いているとはいえ、ことは国家を揺るがすような大事の可能性もある。そうすると、クララは足手まといになりかねない。連絡役として側に控えるという選択肢もあろうが、勝手にフリードの指揮下から離れることも憚られる。

 ひとまずフリードの宮殿に帰ろうと、クララが踵を返したその時だった。


< 199 / 250 >

この作品をシェア

pagetop