【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

12.色恋管理

「まぁ、衣装のコンセプトを揃えるんですの」

「えぇ。その方がより、宴自体を良いものにできますから」


 フリードはそう言って、とある令嬢に微笑みかけた。
 蜂蜜の色のようなブロンド髪が特徴の伯爵令嬢、レイチェルだ。

 レースでできた扇を口元に当て、優雅に微笑むその様は、理想的な令嬢のあり方だろう。
 けれど、フリードには何故か彼女の全てが嘘くさく、面白みがないように感じられる。


(まぁ、どの口がそれを言うんだって感じではあるけれど)


 自分こそ、嘘や偽りで構成されている最たるものだ。人をとやかく言う資格はない。


「残念ですわ。殿下にお見せしたいドレスがありましたのに」


 レイチェルはそう言って、フリードの胸元にそっと手を置く。甘ったるい花の香りに、ついつい顔を顰めそうになるが、代わりに余所行き用の笑顔を一つ。


「――――お料理の件、よろしくお願いしますね」


 耳元でぼそりと囁いてやれば、レイチェルは満足そうにニンマリと微笑んだ。


「良いわ。ハンスが不利にならない程度の情報ならあなたに上げるわよ」

「ありがとうございます」


 フリードはレイチェルから距離を置くと、ニコリと微笑んだ。


(今思えば、シリウスがカール側に付いたのはラッキーだったな)


 カール自身もそうだが、彼の内侍であるイゾーレは他者を寄せ付けようとしない。フリードの得意とする取引も駆け引きも全てが通用しないのだ。

 けれど、フリードにはシリウスがいる。彼を使って、ある程度情報操作ができることは、王太子争いにおける大きな意味を持つ。


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