夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
田中さんとの待ち合わせは陽くんが一緒に行くことになったので、とりあえず駅に向かう。

今日は本当は真っ直ぐに家に帰りたかったが、ドタキャンなど申し訳なくて待ち合わせ場所に行く。

田中さんはすでに席にいた。


「なんで?…なんで、陽介が一緒に来る?」

「悠貴。悪い。やっぱり、俺、こいつのこと誰であっても譲れない。譲りたくない」
そう言って、私の肩に腕を回して隣に座る。

「やっぱりなぁ…。そうじゃないかと思ってた。陽介、お前がライバルとか、ハンデありすぎじゃん」

「あの時、悠貴が乃愛に伝えた日に言えなくてごめん」

「乃愛ちゃんは?俺と陽介、どっちを選ぶの?」

「どっちって……ごめんなさい…私…」


私の気持ちは卓人さんに向いている。だから二人の気持ちには応えられない。

でも、卓人さんには他に大切な人がいる。それなのに、なんで私にキスなんてしたの?いろいろ考えることが辛い。そんなことここでは言えない…。
だから、”ごめんなさい“しか口に出せなかった。

はっきり言えないズルい私に自分でがっかりする。
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