捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
プロローグ 捨てられた男爵令嬢
「ミリュエール・フォン・エストアール!君には失望した!我が愛するアニタに嫌がらせの数々…君はボクに相応しくない!ボクは君との婚約を撤回し、新たな婚約者としてアニタ・ファーランドを迎えることをここに宣言する!」
王宮のセイレーンの大広間。
国王陛下の御即位20周年を祝う祝宴の最中、この国の第2王子レスター殿下は朗々と宣言された。
国外よりの来賓もいらっしゃる中で。
傍らに寄り添っているのは、最近レスター殿下にご寵愛されていると評判のアニタ嬢。たしか準男爵令嬢で、ふわふわの栗色の毛をゆるくまとめ大きな緑色の瞳を潤ませて…小柄で愛らしい。なるほど、庇護欲を唆るな…と他人事のように考えた。
……というか。
周囲から“またか”という空気と、白い目を向けられていることに、当の御本人がたは気付いてらっしゃらないようですね。
(それはそうよね……だって)
レスター殿下が婚約破棄を宣言したのは、二度目。
一度目は二年前で、幼なじみの公爵令嬢との婚約破棄をした。
……なぜか男爵令嬢のわたしを愛し、婚約するから、という理由で。
なぜに?
だって、わたしがレスター殿下とお会いしたことはなく、殿下が遠くからわたしを見て一目惚れしたから…と。
いくらなんでも、軽すぎませんか?
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