捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

アリューシャの英雄伝説では、確かに騎士としてはドラゴンを退治するのが正しいんだろう。フランクスたちの考えを否定するつもりはない。人間に危害を加えるならば、撃退するのが当たり前だ。そうして人間は繁栄してきた。
人間だって人間同士が戦争なんかで命を奪い合う。

甘っちょろい感情では何も解決しない。

でも、それでも。アスター王子はその上で命を奪わない解決策を模索する。それだから、着いていきたい……と思えた。


「わ、これぼくの好きなエメンタールチーズ!美味しい」

エメンタールチーズはぽこぽこと穴が空いたハードタイプのチーズで、ナッツのような香ばしい甘みがあるから大好きだった。

「スカイレース産のをたまたま見つけたからな」

向こうを向いたままぼそっと小声で言ったアスター王子は、なんだか耳が赤い。

(そっか……アスター王子、もしかしてわざわざ下町に出て……パンとチーズを買ってきてくれたのかな?)

果物やひょうたん製の水筒に入ってた飲み物まで、わたしが好きなものだ。洋梨とキャメロット産のアップルティー。

どうしてアスター王子がわたしの好物をご存知かはわからないけれども……自惚れでなければこの遠乗りのすべてはわたしのため、と感じて心が温かくなった。

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