キミの次に愛してる【BL】

十二


 裕文さんのお見合い当日は、2人早起きして、平日の朝のようにバタバタと準備をした。

「ハンカチ持ちましたか?」

 尋ねる僕に、「持ったよー」と緊張感のない声が洗面所から返ってくる。

 ――お見合いってもう少し、緊張感のあるものじゃないだろうか……。

 普段通りの裕文さんに、僕の方がドキドキしてくる。

 もちろん、お見合いなんてしてほしくなかったし、断ってほしいけれど。

 相手の人に裕文さんが「だらしない人」と思われるのは、もっと嫌だった。

「今日は晩御飯もいらないから、ゆっくり友達と遊んでおいでね」

 少しムッ…としたけれど、「ありがとうございます」と全然思っていないのに口先だけでお礼を言う。

 そもそも、今日友達と遊ぶっていうのさえ、嘘なのに……。

 今更言えないから、僕までもが外出の用意をするハメになっていた。

 ――自業自得と言えば、自業自得だけどさ。

「あ、浩次君」

 洗面所の前を通れば、呼び止められる。

「今日の友達って、女の子も来るの?」

 ――意図が、解らない。

「はぁ、まあ……そうですね」

 来るわけがない。

 だからテキトーに、裕文さんの想像に便乗した。

「……へぇ」

 髪の毛をセットしていた彼は手を止めて、僕の方をじっと見る。

 そうしてチョイチョイと僕を手招きした。

「何ですか?」

 寄れば、ジェルタイプのワックスを手に取って、僕の髪に指を差し入れる。

 手の指が、僕の髪を滑っていく感触が、気持ちいい。

 そして裕文さんのシャツが、すぐ目の前にある事にドキドキした。

「よし出来た」

 最後に僕の前髪を抓んでセットしていた指が離れて、裕文さんがすぐ間近で僕の顔を覗き込んでくる。

「うん、男前。きっと誰よりもモテるぞ」

 魅力的に微笑む彼の方が、何倍も男前だと思う。

 テレる僕に気付かずに、最後に僕の頭をひと撫でした彼の手が、離れていった。

< 12 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop