「仕事に行きたくない」と婚約者が言うので
2.
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 ヘラルダはシーラのお仕着せを借りた。これでどこからどう見ても立派な侍女である。ヘラルダは、職場でマンフレットがいじめられているのではないか、ということを懸念していた。でなければ、あれほどまで騎士団に行きたくない、と騒ぐはずがない。

 味噌っかすの第三王子。その言葉がどれだけマンフレットを傷つけているのか、それを口にしている輩はわかっているのだろうか。いや、わかっているから口にしているのだ。マンフレット自身にそれを植え付けるために。

「ヘラルダ様。私の後をゆっくりとついてきてくださいね。このまま、騎士団たちの訓練場を経由して、洗濯場へと向かいます」
 シーラもぱっと一目見ただけではシーラとわからないように変装をしていた。何しろこの王城で働いている者たちは、シーラのことをきちんとヘラルダ付きの侍女と認識しているから。

 ヘラルダにとっては、王城内の探検のような感じがした。あの部屋と勉強をするために訪れるサロンとそれから食堂と。主にそこしか足を運ばぬヘラルダにとって、建物から外に出て、庭園以外の場所を歩くと言うのは冒険以外の何物でもない。ヘラルダが建物にこもっているのにも理由はある。それは、ヘラルダのことをよく思っていないこの国の人間たちに会わないようにするため。彼女たちは、ヘラルダのことをすぐに年増と口にする。それはもちろん、ヘラルダ自身がマンフレットよりも年上だから。

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