お嬢様、今宵は私の腕の中で。

どんよりと気分が落ち込むわたしの肩に、そっと細くてしなやかな手が置かれた。



「ですが、なんとかして許可をいただいて参ります」

「え、ほんとに!?」

「始めに申し上げた通り、我々執事の役目は、お嬢様の望みを叶えるために尽力することですから」



腹部に手を当てて優雅な礼をする九重。



「嬉しい!ありがとう九重!」

「しかし、さすがにお嬢様1人で、というわけにはいきませんよ」

「え……?」



眉を寄せてわたしに言い聞かせるように忠告する九重にキョトンとする。



「出掛けるのはわたしと九重の2人だよ。だから当然九重と一緒、っていうか。むしろ、九重に感謝を伝えるためのおでかけみたいなものだから」

「はっ……?」



やや瞠目した九重は、それから何度か目を瞬かせて、ゆっくりと目を伏せた。


口許にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

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