お嬢様、今宵は私の腕の中で。
花嫁修業は前途多難
「誰あのイケメン……」
「ものすごくカッコいいわぁ〜」
「執事服ということは、誰かの執事さんなのかしら」
息をするように嘘をつく、無駄に顔が整っているこの男。
学園に来て早々、お嬢様方から熱い視線を送られている。
当の本人は全く気にしておらず、少し離れたところでようすをうかがっているわたしの元へ、軽やかな足取りでやってきた。
「お嬢様、探しましたよ」
九重がにこりと微笑んだ瞬間、周りからきゃあっと黄色い悲鳴があがった。
「あの方、桜さんの?」
「あら、不釣り合いではなくて」
「せっかくの美男子がもったいないですわね」
棘のある言葉が耳に飛び込んでくる。
勉強も運動も上手にできないし。
家でもお稽古をサボったりもしているわけで。