お嬢様、今宵は私の腕の中で。
桜が綺麗ですね
無我夢中で走る。
ランは一直線に、大きな桜の木がある庭に向かっていく。
会いたい。九重に、会いたい。
裸足なのも構わず、庭に飛び出す。
屋敷から出たところで、ランはピタリと足を止めた。
ここから先は一人で、と言われているようだった。
澄んだ瞳に頷いて、桜の木めがけて走る。
だんだん小さく見えていた桜が大きくなっていく。
そして、その桜の下に、一人の人物をとらえた。
足を止めて、彼の姿を目に映す。