お嬢様、今宵は私の腕の中で。
最後の方は、先生の声でかき消されてわたしの耳には届かなかった。
もうすっかり絆創膏だらけになった手で片付けを始めると、九重に止められてしまった。
「片付けは私がやりますので、お嬢様は次のご準備を」
「分かった……ありがとう、九重」
裁縫道具の片付けは九重に任せて、沈んだ気持ちのまま次の稽古の準備を始める。
けれど、次の稽古が始まっても、わたしの気分はどんよりと陰ったままだった。