お嬢様、今宵は私の腕の中で。
「とにかく、まだ時間はありますから、そんなに気に病むことはありませんよ」
そう言ってゆったりと浮かべられた微笑の美しさに思わず息を呑む。
ゆっくりと碧眼がわたしを見つめ、それから静かに細まった。
「そ、そろそろ学校に行かなくちゃ」
「そうですね。参りましょうか」
パンパンと頬を叩いて立ち上がる。
薄茶の制服がふんわりと揺れた。
今日もまたお稽古のことを考えると、気分が沈むけれど……。
「大丈夫ですよ、お嬢様」
九重がとなりにいてくれると、少し。
ほんの少しだけ。
嫌いなお稽古だって、頑張れる気がしてくるんだ。