闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「とにかくそういうことだから、保健室で待っていてくれ」

「うん、分かった」


 頷いた私に一安心しつつも、名残惜し気に離れて行った櫂人を見送る。

 櫂人の姿が見えなくなってから、比較的近くにいたクラスメートたちの呆れ交じりの会話が聞こえた。


「相変わらず、あっまあまな二人だねぇ……」

「そうだねぇ、見てるこっちが照れちゃうよ」


 嫌味な感じとかではなくて純粋に感じたままの感想。

 それを聞いて、私は今更ながらに恥ずかしくなる。

 ちょっとした触れ合いですら甘い雰囲気が漂ってしまうのはもう仕方がない。

 櫂人は周りなんて全く気にしていないし、私も櫂人と話しているときは周りのことがあまり見えなくなってしまうから……。

 こういうのを二人の世界に入るっていうのかな? と思いながら、私はクラスメートからの生温かい視線から逃れるように保健室へ向かった。
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