闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 そうしていつもお守りのように持っていたから、あの事故のときもずっと握りしめていたんだと思う。

 お父さんがまた転勤になって、その転勤場所へ移動する途中だった。

 そのとき持っていた荷物は全部燃えてしまったし、送っていた荷物は大きなものばかり。

 残った大切なものはこの貝殻くらいだった。

 両親と海に遊びに行った思い出の品でもあるし、この貝殻は私にとって何より大切なものになったんだ。


 両親との、唯一残った思い出の品。

 そして、初恋の男の子との再会を願う品。

 二つの意味で、とても大事なもの。

 だからこそ、この貝殻を見ていると今はいない両親に励まされているような気分になる。

 だからこそ、男の子との再会を思って未来に目を向けることが出来る。

 私は貝殻を胸に抱くように握りしめ、目を閉じた。


「大丈夫。私は大丈夫だよ」


 自分に言い聞かせるように口にする。

 そうすると、貝殻から元気をもらえるような気がするから。

 しばらくそうしていて心を落ち着けると、私は早めに就寝した。

 明日もまた、元気に朝を迎えられるように。
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