闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
***

「じゃあ行ってきます」


 玄関で靴を履き終えると、見送りにわざわざ出てくれた真人さんに向き直る。

 見送りなんていらないと言ったのに、初日だからと来てくれた。


「うん。忘れ物はないかな? 薬はちゃんと持っているかい?」

「ちゃんとポケットの中に入ってますよ」

「何度も言うようだけれど、絶対に無くさないように。その薬は最後の手段だけれど、万が一があったときにそれを飲まないと君は死んでしまうんだから」


 厳しい表情で念を押されたけれど、何度も言われている事だったから私は軽く返した。


「分かってますって。だから家を出るとき、着替えるとき、帰ってきたときと一日に何度も確認してるんですから」

「そう、だよね。うん、あまり引き止めちゃ遅刻させてしまうね。行ってらっしゃい」

「はい、行ってきます」


 もう一度出がけの挨拶をして、今度こそ私はマンションの部屋を出た。
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