【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

閑話 あるV生の求心

 夕日も落ち闇が近付いて来ている空を俺は教室から眺めていた。

 何をするにも億劫で、ただ決められた通りの授業を受ける学園生活。

 楽しいことなんて一つもない。


 いっそすべてがメチャクチャになってしまえばいい。

 夕日に似た色の炎で燃やし尽くして、闇に染まってしまえばいい。

 そんな昏い感情しか湧いてこないのに、それを実行する気力もない。


 本当に、怠惰という言葉が合いそうだなと自嘲した。


「……(きし)、お前何してるんだ?」

 俺以外誰もいなかった教室に、おせっかいな同級生が廊下の方から声を掛けてくる。

 怠惰に過ごすだけの俺を気にかけるとか……わざわざご苦労な事だ。


鬼塚(おにづか)か……ただ外見てただけだぜぇ?」

 少し間延びしたような語尾で言葉を返す。
 前は普通に話していた気もするが、いつからか口調にも怠惰が現れてしまうようになった。

 ま、問題ねぇけどな。


「それとも何か?」

 俺はニヤリと馬鹿にするような笑みを向けて続ける。

「俺が違反行為でもするんじゃねぇかと見張りにきたのかぁ?」

 鬼塚はH生、俺はV生。
 ハンターは吸血鬼を取り締まる立場だからな。


「……そう言うってことは、何か思い当たる事があるってことか?」

 途端に真面目な顔になる鬼塚。

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