【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 岸がデタラメを言っている様には見えなかったけれど、田神先生達が酷いことをするとは思えなかったから信じきれなかった。

 でも、本来は隷属の儀式だったということは確かなことみたいだ。


 この場にいる田神先生以外の人が、驚きと不信の眼差しを向ける。

 それにすぐに気づいた田神先生は、ゴホンと軽く咳ばらいをして座りなおした。


「……まず、誤解しないで欲しいんだが」

 そう切り出した田神先生はちゃんと説明してくれる姿勢を取る。


「愛良さんと零士に行ってもらう血婚の儀式には、隷属という要素はなくなっているからな?」

「そうなんですか?」

「変に誤解を生まないためにもちゃんと話した方が良いのかも知れないな……」

 細く長めに息を吐きだした田神先生は、飲み物で口を湿らせてから改めて話し出した。


「血の結晶を使う儀式は、大元は血婚でも隷属でもない。一番初めは主従の儀式だったんだ」

「主従?」

「そう。従う側が、あなたに心から仕えると誓う儀式だ」

 そして詳しい手順を教えてくれる。

「主従の儀式は単純なもの。血の結晶は作り出した吸血鬼にとっては本人そのものと言っていい。それを主人となる人物が飲み込む事で主従のつながりができる」

 やっぱり飲み込むんだ……。


 はじめに血婚の儀式を説明されたときのことを思い出す。

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