元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

第二十五話


「うん、外でランチというのも悪くないね」

 街の中央広場のカフェテラスで、リュシアン様が食後のコーヒー片手に満足げに呟いた。
 そのすぐ後ろには護衛であるマルセルさんが静かに控えている。

 ……確かに、今日は絶好のテラス日和だ。
 目の前の広場には多くの露店が並び、観光客や子供たちの楽しそうな声で溢れそれが耳に心地いい。
 なんとも平和で穏やかな風景。――だけど。

(早く、帰りたい……)

 私は心の中でもう何度目かそうぼやいた。
 午前中はこの街の公的機関や劇場、歴史的価値のある建物などの観光名所を案内し、それだけでもうぐったりなのに。

「うん、大体わかったよ。ありがとう。次は君たちの買い物に付き合おう」

 そう言われ、気まずいながらも入った行きつけのブティックでなぜか買おうとした服をプレゼントされてしまった。
 勿論そんなことしてもらうわけにはと丁重にお断りした。しかし。

「姫はもうすぐ誕生日だろう。それに街を案内してもらった礼もしたい。遠慮なんてせずに受け取りたまえ」
「で、でも」
「ああ、姫の友人である君も今日付き合ってもらった礼だ。それは私が支払おう」

 何を言っても聞いてはくれず、アンナも驚いていた。

 そして、ランチも私たちの行きつけのお店が良いというので、アンナとよく入るこの広場のカフェに入ったわけなのだけれど。

(それにしても、ほんと綺麗な顔してるなぁ)
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