元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 リュシアン様はふぅと息を吐いて、もう一度私を見た。

「姫。あいつには気を付けて」
「え……」
「今世でもあいつは君の傍にいる。18歳の誕生日を迎える姫の傍に。きっと、何か企んでいるに違いないんだ」

 じくりと薔薇の痣が疼いた気がした。

「私はもう、あの悪夢を見たくはない」

 酷く悲しげな笑みを浮かべ、彼は言う。

「だから、こうして君を守りに来たんだ」
「……っ」

 これまで何度も聞いている言葉のはずなのに、初めて言われたように感じた。
 そして、彼はテラス席へと戻っていく。

「話の途中だったね。それで、もうひとつというのは?」

 そう訊かれたアンナは一瞬呆けたような顔をしてから焦ったように「いえ、もう大丈夫です」と答えた。
 きっとアンナは、なぜ彼がそんなにもセラスティア姫に執着するのか、それを訊こうとしたのだろうと、なんとなくわかった。

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