元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

第三十六話


 ――でも。

「皆さん御揃いで、授業をサボって何処に行かれますの?」

 エントランスへと続く廊下の真ん中でイザベラが腕を組み仁王立ちしていた。
 ラウルとアンナがそれぞれ小さく呻くのが聞こえた。
 でも彼女の視線はまっすぐ私に向いていて。

「ユリウス先生の急な出立に関係ありまして?」
「……」

 私は彼女を見つめ返し、無言で頷く。
 振り切ってでも行くつもりで、私は先ほど見つけた金バッジを強く握り締めた。

「そう……でしたら、わたくしも同行させていただきますわ」
「え……」
「はあ!?」

 イザベラのまさかの申し出に裏返った声を上げたのはラウルだ。
 私もてっきり止められるものと思ったけれど……。
 そんなラウルをじろりと睨みつけるイザベラ。
 
「あら、わたくしがいると困るような場所なんですの?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど……」
「なら問題ありませんわね」

 そうしてイザベラはつんとした顔で彼の傍らを過ぎ私の前へとやって来た。
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