元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「国のためって言ったってよ、よくそんな残酷なことが出来るよな。まるで生贄じゃねぇか」
「そんな国だから滅んだんだ」

 コーヒー片手に冷たく言ったのはリュシアン様だ。
 見れば彼はクラウスを語るときと同じ剣呑な目つきをしていて私はすぐに視線を逸らした。
 
(そっか。リュシアン様はクラウスと同じくらい、王国のことも恨んでいるんだ)

「それより、聖剣って聖女を刺すための剣なんでしょう? なんでそれを先生が探しているのかって話よ」

 隣に座るアンナが少し苛ついたように口を開いた。
 そういえば先ほどもアンナはそのことを気にしていた。
 彼女は私を見て気遣うように続ける。

「私だって先生がレティをなんて考えたくはないけど、私怖くて……」

 彼女の固く結ばれた両手が震えていることに気が付いて、私はその手に自分の手を重ねた。

「レティは何も知らないの? 聖剣のこと」
「うん。聖女の証を貫くための特別な剣としか……」

 と、そこで思いついたようにラウルが声を上げた。

「聖剣って言うくらいなんだからよ、実は聖女を救うための剣ってことはないか?」
「聖女はみんなその剣で命を落としているのに?」

 アンナに半眼で言われ言葉に詰まるラウル。
< 222 / 260 >

この作品をシェア

pagetop