元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
と、そのとき皆の視線が掛け時計に集中した。
両方の針が、丁度てっぺんを指す。
――私の、18歳の誕生日がやってきたのだ。
「お誕生日おめでとう、レティ」
「おめでとうございます。レティシアさん」
「ありがとう、ふたりとも」
お祝いの言葉をくれたふたりにお礼を言う。
そして、少しの沈黙。時計の秒針の音だけが部屋に響く。
「……」
「……」
「……特に、何もなさそうね?」
「ですわね」
「レティ、何でもない?」
「うん。大丈夫」
笑顔で答える。
胸の痣も確かめてみるが先ほどと変わりない。
アンナは脱力するように枕に顔を埋めた。
「はぁ、一先ず良かったわ」
「ドキドキしますわね」
そんなふたりに苦笑すると、イザベラがすぐ隣で不思議そうに首を傾げた。
「レティシアさんは怖くありませんの? 随分と落ち着いて見えますけれど」
言われて気づく。
確かに、昨日までの不安は殆どなくなっていた。
「怖い……けど、多分今日ユリウス先生のこと色々と知れて、だから、何かあっても先生が助けてくれる気がして。――それに、今はふたりがいてくれるし」
笑顔で言うと、ふたりも笑ってくれた。
「ユリウス先生、きっと明日帰ってきますわ」
「うん」
「レティは先生に誕生日おめでとうって言って欲しいんだものね」
「そうなんですの? 絶対言ってくださいますわよ!」
私はもう一度そんなふたりにお礼を言った。
そうして、私たちはおやすみを言って眠りについたのだった。