元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「ヤベっ」

 ラウルとアンナが顔を青くして、“彼”が小さく舌打ちをして手を引いた。

「今も近くにいるのか」

(え……?)

 憎々し気な声で、確かにそう言うのが聞こえた。
 でも彼はすぐに笑顔に戻り、再び私を見た。

「姫、改めて迎えに行くから待っていて」

 そして彼はフードを被り直し先生とは逆の方向へと走り去ってしまった。
 ユリウス先生は私たちの前までやって来ると息を弾ませながら訊いた。

「大丈夫でしたか? 何かされたりは」

 その表情は真剣そのもので、思わず答えるのが一拍遅れてしまった。

「い、いえ、大丈夫です」

 すると先生はほぅと大きく息を吐いてから、ズレかかっていたメガネの位置を直した。

「それで? なぜこんな時間に貴方たちがここにいるのか、説明してもらいましょうか」

 レンズの向こうの目が完全に怒っていて、私たちは顔を見合わせ首を竦めたのだった。


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