元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。


 と、先生がはぁと呆れたような溜息を吐いた。

「その昔、この辺りにあったという亡国に奇跡の力を持った『聖女』と呼ばれる女性が存在していたことは確かなようですが」
「それが私なんです~」
「もしそれが事実だとして」
「事実なんです~」
「なぜその騎士が僕だと思ったんです。人違いでは?」

 ぶんぶんと首を横に振って私は顔を上げる。

「間違いないです。髪色や目の色は違いますが、私にはわかるんです」

 クラウスは金髪に碧眼だった。
 ユリウス先生は銀髪、そして――眼鏡の向こうの今は紫水晶のような瞳をじっと見つめる。

「先生は間違いなく、セラスティアが想いを寄せていた騎士クラウス。その生まれ変わりです」
「……」

 先生は私から視線を逸らし今度は短く息を吐いた。
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