元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 ちなみに昨日先生からもらった絆創膏はまだ指に巻いたままだ。
 もう傷は塞がっているだろうし、見る度ニヤついてしまってアンナからは散々からかわれたけれど、まだ外したくなかった。

「なので、先生も思い出せるように頑張ってください!」
「……思い出したら、それで満足なんですか?」
「え?」

 ガタン、と先生が椅子から立ち上がった。
 そのまま分厚い書物にまみれた机を回り込み、先生は私の目の前に立った。

「先生?」

 こちらを見下ろすその目つきが少し怖くて私は首をすくめる。
 ……怒って、しまったのだろうか?

「その先を考えたことは?」
「え……?」
< 83 / 260 >

この作品をシェア

pagetop