元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 偉そうに腕を組んで私たちの前に立ったのは、ラウル・ファヴィーノ。
 金髪に碧眼、まるでクラウスのような見た目の彼も初等部からの幼馴染。
 そして一応、私の「許婚」。
 と言っても、あくまで親同士が勝手に決めたこと。私も彼もその気は全くない。
 家柄の良い令息令嬢が大勢集まるこの学園では別段珍しいことではなかった。

「あんな鉄仮面のどこがいいんだか」

 鼻で笑うように言われてムっとする。

「煩いなぁ。人の事をどうこう言うより、ラウルこそいい加減本命決めたらどう?」

 そう、彼は昔っから女の子が好きで、いつも恋人を取っ替え引っ替えしている。
 ルックスが良いことは認める。しかもあのファヴィーノ伯爵家の三男坊。この学園の中でもトップクラスの家柄である彼に近づく女の子は後を絶たない。
 でも何度か揉めている、いわゆる修羅場を目撃したこともあって幼馴染としては少々心配なのだ。

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