男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
「カイルがダンスをする日が来るとはなぁ。」
サラと組合いながら国王が呟く。

「先程聞いたら、軍学校以来だと申しておりました。」

「そうなのか⁉︎それでそつなく踊れるのか…さすがにアイツには敵わないよ。」
サラに笑いかけながら国王が言った。

「学生時代から、アイツにだけは勝てなかった。勉強も運動もなんだって1番だったんだ。良き友でありライバルだ。」

「そうなのですね。
たまにお二人を見ていると羨ましいくらい仲がよろしくて、きっと国王陛下のお心の広さでそのようなお付き合いが出来るのですね。」
サラは微笑みカイルを見る。

「だから、少しは嫉妬させてやろうと思って。」
そう言って国王も笑ってカイルを見る。

カイルは渋い顔をしながら腕を組んでこちらを見ている。

曲が始まり国王と共に踊り始める。

カイルとまた違うが、上手にリードしてくれてとても踊りやすい。

踊りながら段々カイルのいる場所から離れていく。
国王のダンスを観ようと、大勢のゲストが集まって来る。カイルはサラから出来るだけ離れ無いように、一定の距離を保って着いて行ったが、人混みに押されてそれも難しくなる。

曲が中盤に来た時、
突然、ホール内の灯りが一斉に消えた。

しまった!とカイルは咄嗟に思いながら、一目散にサラがいた場所に向けて走り出す。

人々は突然の暗闇にパニックになり慌てふためく。

「大丈夫です!落ち着いて、その場にしゃがんで!」
団員達がそれぞれの持ち場で叫び、パニックを収めようと躍起になっていた。

それでも人々は我先に出口に向かいぶつかり合い、押し合いになる。

「声かけを止めるな。非常ランプを持て!」
カイルは指示を出しながらサラが先程いた付近まで辿り着く。

「すまん。カイル…サラ嬢が見当たらない!!」
国王の声で事の事態を察した。

「大丈夫です!直ぐに見つけます。陛下は警備の者と一緒に退室を。」
的確なカイルの指示で国王は落ち付きを取り戻す。

「近衛、国王と王女を保護室へ。」

「はっ!!」

「カターナ国王の警備はショーンがやれ!」

「了解!!」

暗闇ながらも近くにショーンや団員がいる事を察して指示を出しながら、歩みは止めずサラはどこだ目を凝らす。

緑に光る場所を探す。

サラにプレゼントしたネックレスには特殊な塗料が塗られていて、暗闇でも一定時間光り続ける。

3番出入り口付近に緑の光を見つける。

「3番閉鎖!」
カイルは叫び人混みを掻き分け緑の光に目がけて走る。

「すいません、突破されました!目標人物は背が高く大柄、人質を肩に抱えております。」
警備兵は負傷しながらも特徴をカイルに伝える。

その時点でホールの灯りは再び付き、人々のパニックも収まり始める。

明るいホールの方へ人々が戻ってくる。カイルはその中を逆流し玄関付近に出る。

「玄関封鎖!!」
間に合うか⁉︎
カイルは走りながら指示を出し、玄関付近で揉み合う人影に突進していく。
門兵が3人がかりで男を抑えつける。
担がれていたサラが投げ出されるのを目にしてカイルは咄嗟に走り寄る。

一寸先に覆面の小柄な男が現れ、サラが床に叩きつけられる寸前で受け止め、また担がれ窓に向かって走る。

カイルは一瞬、サラの指先に触れたが氷のように冷たく、心が凍り付く。

サラは大丈夫だ…と自分に言い聞かせ奮い立ち、体制を立て直し覆面の男を追いかける。

男は窓からするりと外に出て、カイルもそれを追う。

「1人ついて来い!!」
大柄の男を押さえていた門兵達から1人カイルの後を追って駆けつける。


覆面の男は、階段下に待機させていた馬車に乗る。

カイルと団員は近くに待機してあった馬に跨り後を追う。

2人で挟み打ちを仕掛けるが馬車は巧みに交わし続ける。

突然、空から突風が吹いたかと思うと、馬車を守る様に黒い竜が炎を吹きカイル達を追い払う。

このままでは埒があかない。

カイルは笛を吹きハクを呼ぶ。

ハクの後に続けてブルーノも飛んできて、空では竜同士の戦いが始まる。
火の粉が空から降り注ぐ中、カイル達は馬車を必死で追いかける。
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