磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「一緒に仕事するのは決まっちゃいましたから、嫌でもなんとかやるしかないですよ。」

新貝が冷静に言うと真海はため息をついた。

「わかってるよ。もう社会人やって長いし、仕事なんだから合わないやつとでも働かなくちゃいけないことは。葉吉さんが言うんだから、私達にとってプラスになることでそれが結局会社にとってもいいことなんだろうね。でも正直、こいつと仕事するくらいならゴリラと仕事した方がマシなんだけど。」

「なんだと!!!」

「あはは!逆にゴリラと仕事してるの見たいです!SNSに写真上げたらめっちゃ『いいね!』来そう!」

個室内や料理の写真を撮っていた玉川が楽しそうに言う。

「私はこういう暑っ苦しくてガサツなムサゴリラは無理。見た目も性格も仕事の仕方も全部。根本的に合わない。」

「俺だってお前のこと嫌い通り越して全く理解できねえ。地球外生命体なんじゃねーかと思うわ。見た目だってこんな厚化粧じゃなくて、俺的にはもっと爽やかな・・・ショートカットで薄化粧で部活のマネージャーみたいな『一緒に頑張りましょう!』って感じの女子がタイプなんだよな。」

「へーえ、マネージャーと付き合ってたんですか?」

新貝が目ざとく食い付く。

「付き合ってねーよ!当時は部活一筋、今は仕事一筋だからな。それでこそ男だ。色恋沙汰なんて俺には必要ない。」

「え?今、タイプがどうとかって・・・。」

大好物の恋バナが始まりそうな展開に浮き足だっていた玉川も肩透かしをくらったようだった。

「あえて言えば、こいつとは真逆の女がタイプだって話だよ。」

「ふーん、告白されたこととかないんですか?北岡さんが行ってたのって、スポーツも勉強も一流の名門大じゃなかったですっけ?確か高校も・・・あと前の会社も大手ですよね。見た目だってスポーツマンって感じでたくましくて、モテたんじゃないですか?」

新貝に言われ悠馬は急に歯切れが悪くなった。

「い、や・・・ないこともない、けど・・・その、断った。」

「へーもったいない。硬派なんですね~。」

玉川が興味深そうに言うと悠馬はビールをガッと飲んでから顔を歪めて口を開いた。
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